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医療通訳はいくらかかる?どうやって頼む?アメリカの病院で医療通訳。

こんにちは、JapaneryのYukaです。

前回書いた記事で、とある集中講座に行ってきた、と書きました。
実は、アメリカで医療通訳の集中講座を受けに行ってました。
医療通訳としてのテクニックや医療用語はもちろん
医療通訳としての倫理、そして患者の権利や法律なども学びました。

*医療知識ゼロでこの講座に挑みましたが、
医療知識に関する学習方法はこちらを参考にしてください。

https://japamily.com/medical-interpreter-how-to-study/

今日は、そこで習った、医療通訳の仕組みや患者としての権利を
まとめていこうと思います。

*注意:法律や規制ごとに関しては常に変わるものなので
ご自身で最新の情報を調べてください。


アメリカの病院で医療通訳を頼むといくらかかる?

これに関する答えは、かなり曖昧になります。
なぜなら無料の場合もあれば、そうでないケースもあるからです。

一つ言えることは、基本的に無料であるべき、と言うこと。

それでは説明していきます。

アメリカで医療通訳が基本的に無料であるべき理由

はい、移民大国アメリカでは、人権についてとても敏感な国です。
以下、Federal Registerと呼ばれる連邦官報の一部に書いてある内容。
連邦官報とは、基本的に連邦政府の考えを公に投げかける手段の一つ。(詳しくはWikipediaを参照)
Title VIに以下の内容が書かれています。

Title VI prohibits discrimination on the basis of race, color, or national origin in any program or activity that receives Federal funds or other Federal financial assistance.

Federal Register

簡単に訳すと:
政府からの助成金や支援金を受け取っている活動やプログラムにおいて、Title VIは人種、色、出身国を理由に差別することが禁止されている。

といった内容です。

ここに書いてある”出身国”というフレーズがキーフレーズです。
出身国という言葉には、その人がその国で使う言葉も含まれる(a person’s preferred language)、
と解釈。医療通訳やそれらをサポートする団体が声をあげ、医療通訳の制度化をどんどん進めている、というわけです。

アメリカ人と同様に、医療費の支払い義務が生じることは当たり前ですが
言葉がわからない、という理由だけで、英語を話せる人よりも多く支払いが生じるのは
差別であるゆえに、医療通訳費用は、患者にチャージされるべきではない。ということです。

この制度に則ると、
政府からの金銭的支援を受けている団体でない場合、残念ながら通訳は自己負担になる、ということです。

言葉を返すと、政府からの金銭的な支援を受け取っている団体の場合
通訳を無料で提供努力する義務が生じる、というわけです。

医療通訳の頼み方

さて、ここでは大きな総合病院のお話をします。
基本的に総合病院の場合、政府からの資金援助があるので、
医療通訳が提供されているからです。

例えば、アメリカに来た。
さて、Primary Care Provider (かかりつけ医)を探そう!という
簡単なアポイントメントだとします。

予約の取り方さえわからない・・・。

そんな時はまず、勇気を出して受付に電話をしましょう。
電話できるほどの語学力がない場合は、受付まで足を運んでみましょう。
(病院には迷惑かもしれませんが、私は初めてアメリカに来た際、
電話だとわからなかったので、足を運びましたwもちろん通訳を頼めることは知らず、自力で解決するしかなかったですが)

そこで、”I would like to make an initial appointment, and also would like you to arrange a Japanese interpreter”といった感じで言ってみましょう。

いやいや、そんな長い文章言えないよ!って方は、
もう足を運んじゃってください。
『I want initial appointment ! Japanese interpreter please!』と
身振り手振りで言えばいいと思います。

通訳はいつまでに頼めばいいのか?当日は?

アテンド通訳(in person)で診察に一緒に来てくれる人もいれば
遠隔地や通訳者のスケジュールが合わない場合、電話やビデオ電話での対応もあります。

緊急事態等に備え、大きな病院はだいたい電話通訳を斡旋している業者と契約している場合が多いので、当日でも、通訳をつけてもらえる可能性はあると思います。

ですが、確実に通訳者を確保したい場合、あらかじめ頼んでおくことが得策と言えるでしょう。

医療通訳者に頼めること、頼めないこと

さて、ここからは医療通訳トレーニングを修了した立場でお話します。

医療通訳者は、英語が話せない患者さんと、英語を話す医療従事者が円滑にコミュニケーションが取れるようにアシストする役です。

患者さんの発言を、なるべく全て正確に、省略したり・付け加えたりせずに
伝えることが任務です。

Code of Ethicsというものがあり、医療通訳者が従わなければいけない倫理が定められています。

例えば『Hello, how are you? I am fine』のような誰でもわかるでしょ!という一語一句まで通訳されると、『バカにされてるの?』と思ってしまうかもしれませんが、実はこれ、医療通訳者の任務です。

なぜなら、この一文は省略しても大丈夫。という判断には
通訳者の主観が入ってしまっており、倫理に沿っていないのです。

医療通訳者は、主観で文章の変更、追加、省略をしてはいけないのです。

それを踏まえた上で、医療通訳者に頼めること・頼めないことをざーっと書いていきます。

(これ以外にもたくさんありますが、一般的なことを書いておきます)

医療通訳者に頼めること

通訳を頼む患者さんは、言葉がわからないだけで
判断能力や自分の意見はありますよね。

通訳者の役割は、患者さんの声を正確に届けること。
そこに通訳者の主観や意見は入れてはいけないのです。

  • 医療通訳が必要ない時に、お断りできる。(ただし、病院によっては、医療通訳者が同席しないといけない場合があるのでその場合は通訳せずとも同席の可能性あり)
  • 医療通訳者の変更・指定をする (この人は嫌だったから変えたい、この人はちゃんと訳してくれなかったからもうお願いしたくない)
  • 自分の診療に関する書類記入のお手伝い (ただし、これは時間がある時のみ。通訳者は、黙読で文章を読み、記入するのは患者さんです。医療的な質問にはお答えできません。
    例:Have you had measles? →はしかにかかったことはありますか?と黙読して読み上げることは可能ですが、
    患者:”はしか”ってなんですか?という通訳者に直接聞かれる質問には答えられません。)
  • 受付で次の予約を入れるお手伝い (ただし、診察時間が推していたり、時間に制限がある場合はできません。)
  • 診察中、お医者さんに質問をする (患者さんが質問をしたときのみ、お医者さんに質問を訳して聞くことができます。通訳者の余計なお節介で勝手に質問はできません)
  • 着替え中や見られたくない検査中に退出してもらう (ただし、意思疎通が必要な場合は対処する必要あり)

医療通訳者に頼めないこと

  • 意見を求める (通訳はアドバイザーではありません。意思疎通のお手伝いです。質問や意見は医療従事者に聞いてください。通訳はその意思疎通のお力添えをするのが役目です)
  • あとで見返せるメモを取ってもらう (通訳者は、話す言葉のやり取りのみで、形に残るメモや書き取りは一切できません)
  • 送迎や子供のお世話 (患者さんやそのお子様に触れることはできません。言語のわかる現地の方が受けないサービスの提供は、不平等になるので、できないのです。)
  • 個人的な連絡先を聞く
  • 患者さんと2人きりになること (診察室内で、患者さんと2人きりになることはタブーです。診察室に通されたあと、お医者さんを待つ間、通訳は診察室外で待つ必要あり)
  • 診察室でお医者さんを前に、『今のは言わないでください』ということ。(医療通訳中は、すべて訳さなければいけないのです。お医者さんを目の前に、『今のは訳さないでください』ということはできないのです。)
  • 通訳者に医療的な質問をする (質問がある場合は、スタッフに言ってください。その際の意思疎通のアシストをする役割はできます)

アメリカ、ちゃんと訳してくれない通訳者に当たったことがある

この意見、とてもたくさん聞きます。

お医者さんがダーーーーと長く話したことを、”Yes, you should”と超短い一文で返す人や
ひどい時には、明らかに内容間違ってるよね?という通訳者に当たったことがある、という経験談。

これに関しては、理由があります。

ただ単に、医療通訳のトレーニングを受けたことのない人がやっている可能性があるということ。

医療通訳者はまず、自己判断で通訳内容の省略・追加・変更はできません。
例えば、how are you?くらいわかるだろう。
そんなの患者さんに訳したら逆にバカにしてると思われて失礼だから
“お元気ですか?”と訳すのは省略した。

はい、これ禁止です。

なぜなら、通訳者の主観や価値観、勝手な判断で
省略してはいけないからです。

州によっては、医療通訳者の資格有無の義務がなく
ある場合でも、通訳斡旋エージェントの採用条件がまちまちなことも。

なので、特にとても重要な診察や手術説明の際に通訳を頼む場合
“What are the qualifications does this interpreter have?”と聞いちゃっていいと思います。

私が受けた40時間の集中講座では、
実際のケーススタディーを元に、討論をして
医療通訳者としての倫理や決まりを徹底的に勉強します。

そこで、イロハを学ぶので、
マニアックすぎる専門用語を分かりかねる場合はあるかもしれませんが
自己判断で省略する、という初歩的ミスはしません。

エージェントと契約している医療通訳者や会社が雇っている通訳者が誰しも
医療通訳の資格を持っていたり講座を受けているわけではないので

自分で確認して、自分の身を守りましょう。

集中講座を修了した今、
この講座なしに現場に立っていたらかなり危険だったな、と思うほど
とてもやくにたった講座でした。

まとめ

さて、基本的なアメリカでの医療通訳の仕組み、
ちゃんと説明できていましたでしょうか。

私は、なんと数年前まで医療通訳者が無料で提供されていることを知りませんでした。

(学生の頃の自分が知っていたら、本当に助かっただろうに・・・)

病院というのは自分の健康に関わる大事な場面。
ぜひ、躊躇せずに使ってください。

安心して医療通訳を利用できるために
この記事では患者の権利や医療通訳者の立場を綴ってみました。

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