バイリンガル

帰国子女は、英語圏に居ただけで英語を習得したのか?中途半端なバイリンガルを育てるくらいならやらなくてもいい説。

幼児英語教育。
3歳までに英語耳を、早期から英語に取り組む子どもたち。
過去に早期英語教育に関する記事はいくつか書いてきました。

私は高校卒業までを日本で過ごした後に個人留学。
アメリカでTESOLや教員の資格を持っています。
今や在米期間はゆうに10年以上。
その立場ですが、早期からやたらむやみに英語教育をするのは、反対派です。

この記事では
  • 帰国子女は英語圏に居ただけで英語を習得したのか?
  • バイリンガル教育を履き違えている説
  • 両言語習得に要する努力

についてを書いていこうと思います。


『帰国子女』を羨んだ一時期

私には、バイリンガルの『帰国子女』を羨んだ時期がありました。
努力しなくても、英語圏にいただけで、カッコよくペラペラ喋る彼らが
なんとも羨ましいな、という簡単な理由からです。

自分は日本で、英語の英才教育を受けることなく
ABCを中学で初めて習得。
発音もマヨネーズ イズ ユカ。
ホッタイモイジルナ。から始めているのですから。


非英語圏の日本で、一から英語を学んだ人間なので、
帰国子女は英語圏にいただけで英語・日本語二ヶ国語を流暢に操れるなんて
なんて羨ましい。

なんとも自分の軽率な考えだったと振り返って思います。

帰国子女=羨ましいという考えが崩壊した時

さて、18歳で単身渡米し、自身もいざ帰国子女というカテゴリーに入った時、
自分が思い描いていた
帰国子女=英語圏に居ただけで英語習得という方程式が崩壊しました。

到底、英語圏に居るだけでは語学力は身につかないからです。

もっと深く話すと、
適当な日常会話は身につくかもしれませんが、アカデミックな英語は、
とてもじゃないけど英語圏に10年住もうが、20年住もうが身につきません。

私は幸い日本で高校を卒業してから渡米したので、
アカデミックな日本語は習得した状態で渡米しました。
=母国語の軸ができた状態で、外国語を習得、ということになります。

アメリカの大学に入ったことで、もともと日本語であった学術的要素を
英語に置き換えながら英語・新しい知識を習得していきました。

そこで初めて悟りました。

母国語の軸ができて居ない小・中学生が、英語圏で暮らすということは
どっちの言語も、努力なしではどっちつかず、
になる可能性がある、ということ。

帰国子女とその親の努力

アメリカの大学生をして居る間、
アメリカ勤務になったご家族の家庭教師をしていました。

小学生と中学生の子どもがおられ、私が会った時は在米2年でした。
彼らは普段アメリカ現地の学校へ通い、土曜日に日本語の補習校へ通っておられました。

小1年で渡米した下の子は、日本語の基礎が非常に弱い反面
学術的要素は、ほとんど英語、という状態でした。
親との会話も日本語で聞かれて英語で返す状態。
すっかり英語が強くなっており、日本語での勉強がお手上げ状態。
英語で英語の内容を理解して居ました。

小学校高学年で渡米した上の子は、日本語の基礎をある程度習得してからの渡米だったので
日本語での会話を好み、親とのコミュニケーションも日本語。
アカデミック言語も、英語を一旦日本語から置き換えて理解して居る状況でした。
補習校での日本の勉強も、努力しつつしっかりと学年レベルを保って居る状態でした。

彼女たちの家庭教師を週に2〜3回して、
下の子の日本語サポート。
上の子の現地校の宿題サポート、並びに日本語補習校での勉強サポートをしました。

そして彼女たちは毎週土曜日、親が片道2時間近くかけて
日本語の補習校に通って居たのです。

私が家庭教師をして居ない平日も、親が毎日一緒に勉強を見てあげておられました。

親・本人の並ならぬ努力がなければ、
二言語の維持(しかも両方アカデミックレベル )は到底無理なのだ。
という状況を見ることで、自分の浅はかな帰国子女=勝手に英語を覚えた説は崩壊したのです。


早期英語教育の問題点

さて、帰国子女=英語圏に居るだけで勝手に英語習得した説は崩壊しましたが
ここからが本題。

日本の早期英語教育の問題点を斬っていきます。

赤ちゃんのうちから英語教室に週1で30分通うだけで、バイリンガルになりますか?
と聞かれたら、なりませんと答えます。

小学校で英語を導入し、朝の会の5分英語の歌を流して歌い、
英語の授業を週に1時間取り入れます。

さて、これだけでバイリンガルになりますか?

ーーーなりません。

中学・高校・大学ではかねてから週に何時間も英語を勉強して居ますが
実際に使える英語を身につけた日本人はどれだけ居ますか?

ーーー限られていますよね。

そもそもバイリンガルとは、旅英会話みたいな会話がちょろっとできる人を指しません。

日常的な会話はもちろん、アカデミックな要素も両言語で不自由なく表現でき、
それぞれの言語・文化の理解があってこそのバイリンガルだと思って居ます。

履き違えたバイリンガルを斬る

一つ上にも書きましたが、もう一度。

バイリンガルとは、ちょろっと旅英会話ができる人を指しません。

私が家庭教師をして居た上の子は
日本語でも英語でも学術的要素を表現することができました。

一方下の子は、英語がとても堪能で、一見バイリンガルと思いがちですが
日本語での能力が到底学年レベルに達しておらず、
日本へ帰国してからとても困ったという話を聞いています。
果たして、親とのコミュニケーションを英語でしか行えなかったくらい
母国語レベルがかなり低下ていたあの状態を、バイリンガルと呼べたでしょうか?

何が言いたいのか、というと、
早期から英語の勉強を始めて、決められた英語の受け答え(What’s your name? How are you? What color is this?等)ができるだけではバイリンガルではないということ。

別の言い方をすると、英語・日本語の両言語で同等の内容を操作できる状態
(読み書きも含め)でないと、バイリンガルだとは言えない、ということです。

厳しい言い方をすると、What color is this? What is your favorite food?を流暢に答えられるだけはバイリンガルではない。ということです。


英語と日本語の両方を習得するに当たっての努力

英語、日本語の両方をマスターしようと思うと
相当な努力が必要になります。

部活に例えると、テニス部に所属しながらバスケ部にも所属する。
そして両活動で、試合に出て結果を残す必要があった、そんな状態です。

先ほど話した家庭教師をしていた子たち。

彼女たちは平日毎日アメリカの学校へ通い、
算数や理科、体育に音楽といった全てを英語で勉強。

家に帰ってからは毎日日本のドリルや教科書で、それらの内容を日本語で勉強。
週末返上して日本語補習校へ通い、教科書の内容を先生・クラスメートと学ぶという環境でした。

つまり、平日の放課後毎日、と毎週土曜日を
日本語の維持・向上に費やしておられたのです。


上記でバイリンガルの努力とは、
部活の掛け持ち、かつ両活動で、試合に出て結果を残せるレベル、と例えました。

その理由はアメリカでの成績をきちんと取っていないと帰国子女枠での受験の際に困る。
日本に帰国してから受験をして日本の学校へ入れるだけの学年相応レベルの日本語の維持・向上の必要もあった。

なので、二つの部活動両方で、結果を残す必要がある、と例えました。

バイリンガルとは、決して勝手に自分のものになるのではなく
努力を重ねた結果なのです。


まとめ

さて、今日の記事では帰国子女やバイリンガルに関することを書きました。

私が早期英語教育を反対する理由は、中途半端なバイリンガル教育は意味がないと思っているからです。

家庭教師をしていた子やその親には覚悟がありました。
なぜなら、アメリカの学校での成績も必要だったし(帰国後の受験の際にそれが内申点とおなるから)、日本に帰ってから日本の社会(学校)で生き抜く学年相応の日本語レベルも必要だったからです。

ある意味切羽詰まった状況で、放課後の楽しい時間を全てと毎週土曜日を返上して
バイリンガルという状況を保っておられたのです。

そういう覚悟も何もない状態で
週に30分、赤ちゃんの時から英語をならうだけでバイリンガルに育つと思っているならば

それは違うんではないか。
その程度の覚悟で早期から英語教育をしているのであれば

私はそんな早期英語教育ほど時間の無駄ないんじゃないか。

そう思うのです。

おうち英語教材