留学・英語

通訳・翻訳者の位置付け

こんにちは、JapaneryのYukaです。

フルタイムで翻訳・通訳の仕事をしていた時期もありますが
現在はフリーランスで、育児を優先しながら細々と継続しています。
主に、英会話の講師、添削、翻訳です。

この記事では、この仕事をするにあたって困ったことを書いていきます。
通訳・翻訳者の位置付けを書き出すことで、
依頼する側へお願いしたいこと、理解してほしいことを
まとめていきます。

こんな人に読んでほしい
  • 仕事柄、通訳や翻訳者さんに依頼する機会が多い人
  • 翻訳・通訳者さんで、悩みを感じている人
  • 通訳・翻訳者に頼んでも、イマイチな訳し方でフラストレーションが溜まっている依頼者

*私は英語専門なので英語、という言語です。

通訳・翻訳者に依頼しても、出来上がった訳に満足していない技術者さんへ

私は、以前フルタイムで技術者の書く文章を訳していました。
納品やトラブルシューティングといった期日の迫った文章の対応が非常に多く
技術者が急いで残業して書き上げた物を、翻訳者が一気に訳す、というスタイル。

もちろん、翻訳者にも即日または数日以内で仕上げてくれ、とかなり厳しい期日が設けられていました。

問題は、急いで書き上げられた原文自体が読みづらいということ。
主語は飛び、技術者の頭の中ではイメージできている内容ですが
装置を実際に触ったことのない翻訳者に、そんな細部まで伝わりません。
ましてや主語が抜け、急いで書かれた殴り書きのような文章です。

私は毎回、技術者に電話をかけ、煙たがられながらも(あちらも忙しいので)
日本語の文章を自分が理解できるまでに直していました。

もう一度言います、翻訳者である私が技術者に問い合わせ
日本語の文章をなおすことから作業を始めていました。

英語に訳す作業の前に、日本語の文章編集作業から始まるのです。

即日翻訳対応を頼まれた時は、電話越しに日本語編集するのでは間に合わず
技術者を私の席に呼び出し
横でリアルタイムで日本語の解説をしていただきながら
英語にその場で訳していたこともあります。

実はこれ、やらない翻訳者はゴロゴロいます。
技術者に期日があるのと同様、翻訳者にも守らなければいけない期日があります。
そのため技術者の文章を、そのまま忠実に訳して終わっている翻訳者は
山ほどいます。

技術者が伝えようとしている文章の意図は別です。
ただ技術者が書いた原文をそのまま機械翻訳する。
ある意味、それは正しいわけです。

でも出来上がった翻訳を見ても、
『あれ、全然訳せてないじゃん・・・』となるわけです。

訳された文章は、日本語から英語に変換はされているはずです。
ですが、正しい意図まできちんと訳されているか。

そこは全くもって別問題です。

技術者にお願いしたいことは、

  1. 主語を省かないこと
  2. 日本語の原文を必ず読み返してきちんとした内容にすること
    (他の技術者に日本語の添削をしてもらえると尚よし)

この二点をまず守ってもらえると、数時間のロスを防ぐことができます。
そして仕上がった翻訳内容見てビックリ!なんてシチュエーションも減ります。

英語ができる=瞬時に全て訳せるわけではない

同時通訳という特殊な世界の話はここでは割愛します。

私は、プライベートにおいても仕事においても
『この文章訳して』と雑に、そしてついで感覚で頼まれることが非常に多いです。

しかもほとんどの場合、前後の経緯が全て省かれ
訳してほしいピンポイントの文章のみが
とても雑に送られてきます。

英語できるなら、一文二文の文章なんて
ラインの返信のようにサクッといけるっしょ〜みたいなノリです。

さて、ちょっと話はずれますが
日本語で普通に友達と世間話をしているとします。
ちょっと遅れて違う友達が輪の中に入ってきましたが
その前の会話に参加していないので、会話に入れない。

この経験ありませんか?

『この文章訳して』と雑に抽出された文章は、まさにそれです。
ましてやそれは世間話ではなく
当事者ではない他人の専門的な分野の切り取られた一部の文章。
こっちから言わせてもらえば、サッパリワカンネー状態です。

例えば、『お腹が痛いです』の一文。

これに関しても、様々な言い方があります。
どのように痛むのか、どれくらい痛むのかで言い方が違い
相手の対応も違ってきます。

学校の養護教諭にいうのか、病院の救急で言うのか、
ただ単に友達にいう会話なのか。
そのシチュエーションさえ、この一文からではわかりません。

お腹が痛いです、を訳すことはもちろん可能ですが
その一文に含まれる意図までを読み取ることはできません。

逆に、『どのシチュエーション?』
『どれくらいの痛み』
『どういった場合の話?』
『会話の相手は誰?』

と、私が質問ぜめにすると、
『一文やのにサクっと訳せへんのか?』

と笑って言われることさえあります。

訳す=意図まで汲み取って訳すことがプロ。
前後の話の流れ、シチュエーション、意図までもきちんと訳せるように
依頼する方もあらかじめ、理解した上で依頼してほしい。

雑に抽出した文章をポーンと送るなんて
訳す人をエスパーだと思っているのか?と聞きたくなります。笑


通訳・翻訳者としてフラストレーションが溜まっている人へ

私は、フルタイムで翻訳・通訳業務をしていた時
かなり不満が溜まっていました。

なぜなら冒頭でも話したように、
日本語の意図さえ読み取れない文章が多すぎたからです。

それなのに、まず日本語の意図を読み取ろうと質問ぜめにすると、
なんだか『ほんとに英語できるの?』と言う空気になる恐ろしさ。

忠実に訳したい。
筆者の意図をしっかり文章に込めたい。
機械翻訳はしたくない。

ましてや、人命や危険を伴う作業の訳
(機会のトラブルシューティングや医療系)であれば
なおさら、文章の意図を明確にしてから訳す必要と義務があります。

しかし、依頼者は訳す側の人間を
エスパーかスーパー翻訳機と勘違い。

いやいや、あなたの意図まではその1文から汲み取れません。
と言いたい日々でした。

私が扱っていた翻訳内容で
『長時間吸い続けると危険ですので気をつけてください。』とありました。

もう謎だらけの文章ですよね。笑

『長時間を数値化してください』
『何を吸い続けるのか明確にしてください』
『気をつけるレベルはどの程度ですか?』

気をつける=命の危険を伴うのか、気分が悪くなるレベルなのか、頭がちょっと痛くなるくらいなのか、その危険レベルもわからないのです。

長時間が30分なのか3時間なのかもわかりません。

逐次通訳であれば、当事者同士がその場で相手の意図を確かめることができますが
翻訳はそうもいきません。

私は、なんとか技術者や依頼者に訳す業務に必要なことを説明し
依頼者の理解を得る、と言うことに勤めました。

最終的には部長に
日本語の文章をきちんと編集した状態で渡してもらえることが、
お互いにとってこれだけメリットになる、と説得し
技術者や依頼者にそれを徹底していただけるよう、直訴しました。

訳すと言う作業だけでなく
訳す上で相手に求めていることを明確化させ伝え
通訳者・翻訳者の本来の位置付けを説明することも
大切な仕事の一つだと思います。


まとめ

翻訳を始めた頃、雑に渡される文章に対して
質問することを躊躇していた時期がありました。

しかし、依頼者と翻訳者両方を守るには
意図を汲み取れない文章のclarificationを求める必要があると気づいてからは
躊躇せず質問できるようになりました。

翻訳・通訳者として、わからない(訳し方ではなく文章が)場合は
相手にそれを伝えること。

通訳・翻訳者そして依頼者の両者に
この考え方を理解してもらう必要があるな、と感じることが多く
この記事を書いてみました。

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